教科書プロジェクト目次に 戻る /情報C入口に 戻る


第5章 インターネット社会のルールとマナー

コンピュータを用いた情報処理や、 ネットワークを用いた個人による通信・情報発信の技術は、 この10年程度の間に急速に普及し、 多くの種類・形式の情報流通が行なわれるようになってきました。

私たちの日常生活にコンピュータ・ネットワークが浸透するにつれて、 さまざまな情報がネットワークを流れるようになります。 それらの情報は、 取り扱い方次第では他者の権利を侵害したり、 自分の権利を侵害される結果を招いてしまうでしょう。

本節では、 「WWWによる情報発信」 や 「インターネットメッセージの発信」 を説明しながら、 ネットワーク社会における 「公平・公正・責任ある態度」 とは何かについて考え、 「インターネット社会に参画する態度」 のありかたを検証します。

5.1 マスメディアとパーソナルメディア

メディアないし媒体とは 「何らかの情報を伝達する手段」 を意味する、 非常に範囲の広い言葉です。 コンピュータネットワークなどの通信技術ではケーブルなど情報を伝える材質を 「通信媒体」 と呼びますが、 単に 「メディア」 と呼ぶ場合にはずっと広い意味を持ち、 新聞、 テレビ、 ラジオ、 雑誌などのマスメディア (大衆を相手とするメディアという意味) や、 おしゃべり、 電話、 手紙など、 人と人が情報をやりとりするものすべてが含まれます。

メディアが運ぶ物理的なもののことを、 表現と言います。 新聞の紙面、 テレビの画像と音、 おしゃべりの時の音声、 見ぶり、 手ぶり、 表情などはすべて表現に当たります。 表現は、 メディアが情報を伝達するための道具だと言えます。

メディアと表現の関係
図4.1: メディアと表現の関係

これと対比して、 情報の送り手が伝達したいと思うことがらそのものを意図と呼びます。 すべてのメディアにはそれぞれ固有の制約や限界がありますから、 情報の受け手にすべての意図を完全に伝達することは原理的に不可能です。 言い替えれば、 送り手の意図と受け手が受け取った意図との間には、 不一致が存在するのが普通です (図4.1)。 そして、 その不一致の現われ方はメディアの種別によって違って来ます。

【演習】A群の情報をB群のメディアのそれぞれで伝えようとした場合の適否やその理由を表の形でまとめてみよ。
A群
自作のメロディ、 自作の絵画、 自作の小説、 クロスワードパズルの答え
B群
電話、 写真、 カセットテープ、 ガラス越しの身ぶり、 葉書

5.1.1 情報伝達と評価

1対1のメディアの場合には、 疑問点について質問するなど、 何回もやり取りすることで送り手の意図と受け手の理解との不一致を小さくして行くことができます。 しかし、 マスメディアの場合にはそのような手段があまりありません。

さらに、 受け手が受け取る情報はすべて、 送り手が送ったもの (上述のように、 これは必ずしも送り手が送ろうとしたものとは一致しませんが) なので、 それが正しく何らかの真実を反映しているかどうかは、 その表現だけでは分かりません。 場合によっては、 送り手はわざと偏った情報を送ることで、 受け手を自分の都合のよいように操作しようとすることすらあります (情報操作)。

これは、 送り手が必ずしも嘘をついていることを意味しません。 たとえば、 複数の正しい情報のうちから、 送り手にとって都合の悪い情報を伝えず、 都合のよい情報だけを伝えるというのは、 情報操作の古典的な手法です。

情報操作やその他の正しくない情報に対して防御するためには、 複数のメディアからの情報を比較したり、 常日頃からそれぞれのメディアの特性について注意を払っておき (「あの人は正直者だ」「この新聞はセンセーショナルに過ぎる傾向がある」)、 自分なりの評価を持つことが大切です。

【演習】トランプをよく切り、 10枚抜いて 「送り手」 だけがその内容を見ます。 そして、 「どのような札が含まれているか」 を途中で息つぎをしないで言えるだけ言いますが、 ただし札の具体的なスーツ (マーク) や番号を言ってはいけません (それらを表す符丁を定めてもいけません)。

「受け手」 はそれを聞いて、 10枚の札が何と何かを当てます。
  1. 2組に分かれて交替で 「送り手」 を立て、 相手の組にどれだけ多く正解させるかを競いなさい。
  2. 上と同様だが、 相手の組にどれだけ少なく正解させるかを競いなさい。 ただし 「送り手」 が嘘をついたりわざと口ごもったりした場合にはペナルティを課します (どちらのチームにも属さず中立の審判を立てる必要があります)。

5.1.2 WWWにおける情報伝達

ここまでで、 一般のメディアにおける情報伝達について見て来ましたが、 WWW の場合はどうでしょうか。 WWWは、 一般のメディアと違った次のような特性を持っています。

こうして見ると、 WWWは極めて強力なメディアですが、 その分だけ大きな危険をはらんでいることが分かります。

従来のマスメディアでは編集者やプロデューサといった、 発信する前に情報を整理しチェックする人が存在しました。 また、 誤った情報や社会的に問題のある情報が流されれば多くの読者がそれに気づき、 問題点を正すような社会的圧力が働きます。

しかし、 WWWの情報は一人だけで発信可能ですから、 上で述べたようなチェックは発信者一人の中でだけしか働きません (まして発信者が意図的に情報操作を行おうとしたら、 それを止めるものはありません)。 また、 その情報を見た人があなただけであれば、 他人の目によるチェックも存在しません。

たとえ多くの人が見て、 誰かが問題に気づいたとしても、 それを訂正させるのは難しいかも知れません。 発信者に忠告したとしても、 発信者がそれを無視した場合、 他に取れる手段がないのです (世界中のユーザのマシンにこれこれの Webページには間違いがあるから注意しろというポストイットを貼って歩くことは不可能でしょう)。

ですから、 可能な唯一の対策は、 WWWで情報を取り出す人が、 発信者の意図や上のような危険性を理解した上で、 持って来た情報をどのように使うか決めることだと言えます。

【演習】実際にWebページを公開してみて、 見た人が自分が意図した通りに見ているかどうかを調べるには、 どのようにするといいか考えてみましょう。

5.1.3 発信者の意図を読み取る

では、 実際にWWWのページを見て発信者の意図を正しく知るにはどうしたらよいでしょうか。 実は多くの場合、 発信者の意図はWWWページに (少なくとも入口ページに) はっきり書かれています。

また、 書かれていないとしても、 ページを見れば意図はすぐ分かる場合も多くあります。 企業や団体の広報ページであれば、 見ればそのページがその企業や団体をPRしていることがすぐ分かるでしょう。 また、 自分を表現する場として作られているページであれば、 ページ全体が 「見て見て!」 と語り掛けて来るでしょう。

しかしその半面、 世の中には意図がよく分からないページもたくさんあります。 それらも、 学校の課題で作りたくもないのにWWWページを作らされたとか、 ちょっとWebページづくりを試して見たけどすぐ飽きてほったらかしになってしまったとか、 細かく見ればいろいろな背景がきっとあるでしょう。 そして結局のところ、 意図が分からないページは、 (自分にとって) 有用な情報を得られるページではない、 ということなのです。

【演習】ふだん良く見ているページと、 はじめて見るページ (友人に紹介してもらいなさい) を5つずつ取り上げ、 そのページの意図を書き出してみよ。 どちらの方が意図のはっきりしたものが多かったか。 またそれはなぜか。

5.1.4 情報の正しさを読み取る

先に述べたように、 意図の明確さと情報の正しさとは別の問題です。 では、 あるページに書かれた情報が正しいかどうかを、 どうやって判断したらいいでしょう。 いくつか可能性を挙げて見ます。

【演習】先の演習で取り上げたページからいくつか選び、 上述の方法でそれぞれ正しさを確認してみよ。 「自分の考え」 はどれくらい当てになったか?

5.1.5 WWWで発信者の要求に応える

ここまで学んだ範囲の機能では、 たとえば自分が発信者になったとしても、 それを読んだ人は 「だまって」 ページを読んでいるだけで、 反応を返してくれませんね。 しかし、 発信者としては自分のページを読んだ人がどのような感想を持ったか知りたいだろうと思います。 また、 もっと積極的に、 (アンケートのように) 読んだ人の意見を集めることをおもな目的として情報を発信することもあるでしょう。

このような要求にこたえて、 WWWでは、 情報の受け手が発信者に情報を返す機能が備わっています。 それには、 たとえば図4.2のような画面を使います。 このような 「記入用紙」 の機能をWWWではフォームと読んでいます。

フォームには、 記入欄やいくつかの選択肢から項目を選ぶ仕掛けなどの 「部品」 が並んでいて、 これらを自分の回答内容に会わせて設定してから提出ボタン (「提出」「送信する」 などと書かれているボタン) を押すことで、 記入内容が発信者に転送されます。

典型的な 「部品」 としては次のようなものがあります。

記入用のフォーム
図4.2: 記入用のフォーム

フォームのような機構は、 これまで一方通行だったWWWを発信者と受信者が相互にやりとりできるものに変えました。

【演習】演習用のフォームに記入して送信してみよ。

5.1.6 WWW上でのその他の問題

ここまででは、 WWWでの情報発信者と利用者の関係だけを考えて来ました。 しかし、 コンピュータ技術が極めて高い柔軟性を持っていることの裏返しとして、 悪意を持つ人が発信者と受信者の間にさまざまな形で割り込んで来る可能性があります。 それらの危険性についても簡単に説明しておきましょう。

ここで注意しておきたいのは、 これらはすべてコンピュータがなくても起こり得る問題行為の 「コンピュータ版」 に過ぎない、 ということです。

ただ、 ネットワーク経由で居ながらにして世界中のどことでもやりとりできるというコンピュータ技術の強力さが、 これらの問題を増幅している、 という側面があるとは言えます。

【ちょっと気をつけて!】 なお、 これらの問題のうち、 盗聴や改ざんなどは、 暗号技術を使うことである程度防ぐことが可能になっています。 つまり、 通信文が暗号になっていればそれを途中で傍受しても意味が取れませんし、 書き換えると正しく元の文に戻らなくなるので書き換えたことが分かってしまいます。
【演習】上で説明したような問題が起こってしまった場合、 どのような点に注意して復旧を行なうべきでしょうか。

5.2 インターネットメッセージを作る前に

5.2.1 価値のある情報とは

インターネットメッセージに限らず、 多くの文書は自分以外の他人が読むことを仮定して作られます。 しかし、 インターネットメッセージの場合は、 紙に印刷されることがないせいか、 ついつい独り言的なおしゃべりや、 多くの人に聞かせるべきでないメッセージの発信を行なってしまいがちです。

インターネットメッセージを書く場合の大原則は 「価値のある情報を発信しましょう」「自分のメッセージを読む相手のことを考えて書こう」 です。 すなわち、

をいうことを、 意識的に 心がけるべきでしょう。

5.2.2 電子メールかネットニュースかWWWか

「電子メール」 と 「ネットニュースやWWW」 との最大の違いは、 そのメッセージを読む人の人数の違いではなく、 読む人が特定されているか、 不特定多数かにあります。

電子メールの場合は、 その通信範囲が多くなく読む人を特定して記述することができます。

それに対してネットニュースやWWWの場合は、 ごく一部の人達しか目を通さないような内容の場合でも、 そのメッセージを読む少数の人の顔ぶれを最初から期待することはできません。 一旦公表されたメッセージは公表した人が制御できない範囲にまで伝達され、 書いた人が意図していない人がそのメッセージを読み、 良くも悪くも思わぬ反応が得られることもあります。

また、 非常に多くの人達が加盟しているメーリングリスト (第2.2.1節で説明します。 ) と呼ばれるグループでも、 読む人の顔ぶれは一定の目的を持った人達の集まりですから、 「特定多数」 ということができます。

このような特性を考えて、 電子メールとネットニュースやWWWを使い分けることで、 より価値の高い情報発信ができるようになります。

5.2.3その情報は他人に価値があるか?

すべてのインターネットメッセージが 「価値のあるもの」 である必要はありませんが、 送り出した人には価値があっても、 それを読む人に価値があるとは限りません。 極端にいえば、 送り出した本人、 たった一人だけしか価値を見出していないかも知れません。

メッセージの中身を価値があると評価する人が特定の人達に限られるならば、 それは電子メールにするべきでしょうし、 より多くの不特定多数の人が面白いであろうと思える場合は、 ネットニュースやWWWにするべきでしょう。

5.2.4 メッセージに関すること

まず、 内容を書いたら、 最低でも一回は読み直すようにします。 そのとき、 読む人を想像してみましょう。 どんな端末を使っているでしょうか? どんな気分で読むでしょうか? どんな言葉の人が読むでしょうか? こういった想像をめぐらせるだけで、 メッセージの内容が、 他者にやさしい内容になります。

1行は何文字であるべきか

つい最近まで、 多くのコンピュータの文字表示画面の幅は英字80文字であると仮定して通信が行なわれてきましたが、 最近はウィンドウシステムが普及してきたため、 その結果、 幅80文字にこだわらない使い方が普及をはじめました。

しかし、 実際には、 まだ多くの世界中の利用者が80文字幅の表示を前提としてコンピュータを使っています。 したがって、 幅80文字の画面に表示させると非常に見にくいような文書を、 電子メールやネットニュースの記事などに用いるべきではありません。

例は、 幅80文字 (漢字40文字) の枠の中に、 幅82文字 (漢字41文字) で改行する文書を表示させています。

表示幅と改行幅が一致していない例
図4.3: 表示幅と改行幅が一致していない例

なお、 画面に文字がぎっしりつまって読みにくいのではないかという心配をして、 1行おきに文章を書く人がいますが、 インターネットではそのような配慮はむしろ迷惑なこととされています。 これは、 いまだに 「多くの行数を表示できない端末」 を用いている人が多いことと、 1行おきに書かれた文章では、 段落のまとまりなどが分かりにくくなり、 引用や利用に向かないからです。

相手が読むことのできる文書

まず、 どのような形式ならば相手が読むことができるのかを調べておくべきでしょう。

通信相手が使っているコンピュータの画面に 「日本語の漢字」 が表示されるかどうかを考えてみましょう。

特に電子メールの場合には、 それを読むであろう人が特定されているので、 日本語の漢字を表示できるのか出来ないのかが不確かな場合には、 最初の通信には日本語の漢字を用いるべきではないでしょう。

同じように、 相手がその文字を表示できるかどうかが不明確な、 いわゆる丸数字やローマ数字などの 「機種依存文字」 と呼ばれている文字や、 インターネットでうまく中継することが出来ない 「半角カタカナ」 などの文字は、 インターネットでは用いるべきではありません。

また、 電子メールやネットニュースは元々、 テキストデータをやりとりするための通信手法ですから、 バイナリデータを送ることはできません。

バイナリデータを電子メールやネットニュースで送る必要がある場合には、 そのデータをテキストデータに変換して送る方法がありますので、 それを使います。 現在のインターネットでは、 何通りかの変換方法があります。 したがって、 受けとる人が利用可能な方法を先に調べておくべきです。

メッセージの大きさ

大きいばかりで中身のないメッセージをやりとりすると、 通信時間 (電話回線経由で読む人の電話代も考えるべきでしょう!) や保存領域の無駄になるので、 一つ一つのメッセージの大きさは適当な 「小ささ」 にします。

さらに、 多くの電子メールやネットニュースのサーバーは、 ある程度以上のメッセージの送信を拒否するようになっています。 これは、 さまざまな誤操作・誤動作により、 非常識な大きさのファイルが電子メールなどで送信されてしまうことを防ぐためです。

また、 参加人数が多いメーリングリストの場合は、 1通の電子メールが大量の通信を引き起こすことにも注意すべきです。

Webページの設計

回線の種類、 機械の種類、 OSの種類、 ソフトウェアの種類などが異なる、 世界中のいろいろな環境にいる人がWebページを見ています。

どんな人でも等しく情報提供が受けられるようなWebページを目指すには、 読み手の環境の違いを意識したHTMLを書く必要があります。

相手の画面の大きさや、 相手の画面で使用可能な色数、 他に必要なソフトウェアなどについても、 Webページを見るために必要な条件はなるべく少なくしておくべきでしょう。

個人情報

インターネットメッセージの内容には、 「個人情報」 に関する話題を書くべきではありません。 特に、 ネットニュースやWWW,メーリングリストに 「個人情報」 を公開すると、 さまざまな危険を伴います。

挨拶だけ・お礼だけには意味があるか?

挨拶やお礼だけのメッセージは、 読んだ人の反応が難しくなり、 無駄なメッセージと見られてしまい、 大抵無視されます。

特に、 メーリングリストやネットニュースの場合は、 他の多くの人の目に触れる内容ですから、 「ネットニュースに投稿するにふさわしい内容」 に気をつけるべきでしょう。 場合によっては、 電子メールを使って個別に返事を書いても構わないのです。

白熱した議論もほどほどに

特に、 ネットニュースの場合は、 個々の人が自分の意見を表明するばかりで議論が噛み合わなかったり、 相手の発言内容よりもその表現に意識が集中してしまったりすることがあります。 このような事態を 「フレーム (炎) 」 といい、 大変危険な状態です。

【ちょっと気をつけて!】 フェイスマーク

文字のみからなる情報交換の一手段である電子メールやネットニュースの場合、 自分の感情を表現するために、 フェイスマークと呼ばれる記号列を用いることがあります。 例えば、 以下のような使い方をします。

今日はご苦労さまです。

面白かったですね。(^_^)/"




This article is a test posting article.

Please ignoe me. :-)


などです。

また、 フェイスマークとは違いますが、 文章中に 「 (笑) 」 などを使うこともあります。 これらの記号は使い過ぎると面白みをなくしますが、 使い方によっては、 意思の疎通を助けるでしょう。

5.3 著作権と著作権法

著作権とは一体、 何でしょうか?

著作権は、 もともとは著作権者に無断で複製を作らせない権利であり、 また、 複製によって生じた金銭的利益を著者に還元させる権利です。

日本国政府の定める著作権法は、 1886年にスイスのベルヌで締結された 「著作権保護同盟条約」 (通常、 「ベルヌ条約」 と呼ばれます。 ) にしたがって、 日本で制定された法律です。 同じように世界のほとんどの国が 「ベルヌ条約」 にしたがって、 自国の法律の一つとして、 著作権法を定めています。

5.3.1 著作物

著作権法における著作物とは、 「文学的・音楽および芸術に属する製作物で、 思想または感情を表したもの」 と定められています。 また、 著作物の翻訳・変形を施したものは、 最初の著作物に対する 「二次著作物」 と呼ばれ、 「原著作者」 と呼ばれる最初の著作権者と、 翻訳や変形を施した著作権者の両方が著作権を持ちます。 写真や絵画の場合は、 被写体が著作物の場合には二重に著作権が生じ、 そうでない場合には、 撮影した人のみに著作権が生じます。

ここで注意しておきたいことは、 著作物の特性です。 例えば、 円周率の数の並びのように 「文学・音楽・芸術」 のいずれにも所属しないものや、 事実の報道・ 伝達などは著作物ではありません。 また、 著作権は、 原著作者の死後50年を持って消滅し、 その後は誰でも自由にその著作物を利用することが可能です。

著作権法の制定以降、 著作権法はさまざまな著作物について、 その権利保有者の権利を保護してきましたが、 技術の発展にともなって、 その中身も時代に合うように逐次変更を受けています。

例えば、 映画は主に製作会社が権利を保有する著作物ですが、 映画を上映する権利も著作権の一つとして保護されます。 したがって、 映画のフィルムを買い取っても、 上映権を買わないと上映が出来ません。 また、 コンピュータのプログラムも著作権で保護されます。

5.3.2 著作権の主張

著作権の国際的な保護条約である 「ベルヌ条約」 加盟国では、 著作権は、 特に届出や登録をしなくても著作物を製作した段階で発生します。 これを、 「無手順方式」 といいます。

しかし、 ベルヌ条約に加盟していない一部の国での著作権の保護には、 一定のルールが必要となります。 現在、 世界中のほとんどの国が加盟している 「万国著作権条約」 の加盟国では、 著作権の主張のために、

Copyright,(C) 著作権者の名前, 発生年, All Rights Reserved.

という文字列を必要とします。

現在のところ、 ベルヌ条約非加盟国で万国著作権条約に加盟している幾つかの国に対しては、 この表示がないと、 著作物の無許可での複製に対抗することはできません。

5.3.3 著作権の譲渡と著作権者人格権

著作権は、 他人に譲渡することが出来ます。 したがって、 市場に流通させることが得意でない原著作者の著作物を、 市場の事情に詳しい他人が買いとり、 広く社会に流通させることが可能になります。 (著作権法第17条〜第20条)

しかし、 ここで気をつけなくてはならないのは、 「著作権者人格権」 といわれる権利の存在です。 著作権者人格権は、 原著作者のみが保有する権利で、 他人に譲渡したりすることはできませんし、 したがって他人から買い取ることも出来ません。

著作権者人格権で保護されるのは、 著作物の製作者の名前を表示させる権利や、 著作物の改変を禁止する権利です。 例えば、 著作権者人格権を行使することで、 パロディーの作成の禁止なども可能です。 また、 原著作者が公開を禁じている著作物の場合は、 たとえ著作権を買いとっても、 それを複製して公開することはできません。

著作権者人格権を行使すれば、 原著作者とは異なる名前を著作権者のように見せかけて著作物を複製することも禁止できます。

5.3.4 著作権の制限

著作権は本来、 著作物の適正な利用を目的として制定された権利ですから、 著作権法では、 適正な利用に当たらない過度な権利の主張や、 一定の用件を満たした場合には著作権を制限し、 利用者が自由に著作物を利用できるようにしています。 (著作権法第30条〜第50条)

例えば、 学校の入学試験に用いる問題文の場合、 事前に著作権者に連絡を取ってしまっては公正な試験の実施に障害が生じます。 また、 入学試験に用いたことで著作物の売上に障害が生じるとも考えにくいので、 このような場合の著作物の利用は、 著作権者の許諾・著作権使用料の支払いをすることなく可能です。

5.3.5 著作物を利用する際に

著作権者の許諾を受けて他者の著作物を利用する場合は、 文書内に使用許諾 (acknowledgement) を明示します。 これは日本の慣習にしたがって、 謝辞のような形にしておけばいいでしょう。

以下の文書例は○○○○氏が著作権を持つ文書です。 使用を許可して下さった○○○○氏に感謝します。

5.3.6 著作権に関する表示

先程、 著作権は基本的に無手順で発生するとの説明をしましたが、 現実には、 多くの商業的著作物には、 著作権マークと共に、 著作権に関する表示を行なっています。

これは、 万国著作権条約で必要な形式での表示を行なうという目的の他に、 著作権表示を陽に行なうことで、 著作権について関心の薄い人に対しても、 著作権法によって保護されることを印象付ける役目があります。

そこで、 コンピュータを用いた文書作成の場合も、 できる限り著作権に関する表示を行なうようにしましょう。

5.3.7 引用と参照

他の著作物のある部分を、 自分の著作物の一部に含める行為を 「引用」 といいます。 引用は、 著作権法に定められている一定の要件 (および、 判例に基づく妥当な解釈) を満たせば、 著作権者の許諾なしに行なうことができます。

一方、 他の著作物の名前や特定の場所を提示す行為を、 「参照」 といいます。 参照も許諾なしに行なうことが可能です。 しかし、 プライバシーの問題には注意する必要があります。

5.3.8 他人の著作物の一部を利用する

他人の著作物を自分のことばや現代風の言葉に直して引用する場合と、 「文字通りの元のままの表現」 を引用する場合があります。 いずれの場合も、 元の発言がどのようなものであったかを読者が自分で確認できるようにすべきです。 したがって、 巻末などにおく参考文献表に、 書物の場合著者、 書名、 出版社などの書誌データと引用ページなど

雑誌の記事著者と記事のタイトルのほか雑誌名、 出版社、 巻号ページ数、 などの書誌データ

を示すことが最低限の作法となります。

要約も含め自分の表現に直した場合

この場合には、 文章の責任は自分にあることになり、 特に他人の著作物を引用したとはいいにくい場合もあります。 しかし、 そこで表明されている意見が自分の独創的な意見でない限り、 作者が自ら 「引用である」 と解釈して、 引用の要件を満たすように書くべきでしょう。

引用の要件

引用の場合には、 自分の文章と区別するために、 引用部分を明確に示す形式上の約束に従う必要があります。 文一つ程度、 またはそれより短い引用の場合には、 引用部分を引用符で囲むのが一般的でしょう。 それより長く、 一パラグラフ程度にわたる場合には、 前後に空行を置いて地の文と区別し、 引用部分はインデントするのが一般的でしょう。

例えば、

これは、 引用されるべき文章なので、 このような書き方をすることで、 境界を明確にしています。

のようにします。

インターネットメッセージの引用

まず、 電子メールの中身、 ネットニュースの記事、 WWWコンテンツを利用するには、 発信者などの著作権保有者の許諾をとる必要があります。 これは、 既に公開された文書の場合も、 そうでない場合も同じです。

もちろん、 それらの文書を利用する際に、 それが引用の要件を満たす場合には著作権の問題は生じません。 したがって、 無許可で引用を行なって構わないことになります。

しかし、 特に電子メールに代表される私信の場合には、 著作権の問題は克服できても、 プライバシーの問題を克服する必要があります。

5.3.9 WWWの著作権

WWWで公開されている文章や画像などは、 「公開されているのだから、 どこでどのように複製しても構わない」 という誤解をしてしまいがちです。 しかし、 たとえWWWで掲示されている文章・画像であっても、 著作権を無視することはできません。

著作権法によれば、 著作権者が認めているのは、 インターネットを通じてその文章・画像などを見ることの出来る権利だけであって、 インターネットを通さない方法で利用する権利を含んでいません。

また、 技術的に簡単に複製可能な状態にあることと、 それを複製して構わないかどうかということは異なった次元での判断です。

5.3.10 WWWのリンクと引用

直接に画像ファイルの複製を行なっていなくても、 リンクを使って他人の著作物の一部を指示しているとき、 これを引用と解釈すべきでしょうか。 それとも、 著作物の利用とみなすべきでしょうか。

この問題は多くの議論を経て、 「結果としての見え方」 がどのようなものであるかを考えて対処するべきであるという認識が芽生えてきています。 すなわち、 例えリンクを使ったにしても、 それを表示させた時の見え方があたかも自分が著作物の使用許可を得ているかのように見せている場合は、 著作物の利用とみなされるようです。

これに対してリンクを使わず、 URLの文字列だけを表示して、 利用者にそのURL を直接打ち込んでもらう方法で他のWebページを参照させる仕掛けは、 引用の一部として捉えても構わないでしょう。

しかし、 URLが秘匿性を持つ場合、 情報発信者が秘匿しているURLを勝手に公開していいのかという問題は残ります。 言い替えるならば、 無許可で他人のWeb ページを指すURLを公開したりリンクを作ったりする行為に、 プライバシーの侵害の可能性があるかどうかという問題が未解決です。

「WWWの本来の役割に照らし合わせれば、 WWWとは情報を公開する仕組みであるから、 URLにはプライバシーの保護は及ばないのではないか」 という意見もあれば、 「パスワードなどを使った保護が行なわれていないものには、 プライバシーの保護は及ばない」 という意見もあります。 しかし、 一方には 「他者の電話番号の無許可公開と同じことではないか」 という意見もあります。

したがって、 この問題には現在のところ一定の共通理解が得られているとはいえません。 保守的で良識的な理解を行なえば 「許可を得た場合に限り行なって良い」 と考えるべきでしょうが、 WWWの精神を尊重すべきことも妥当な意見でしょう。

5.4 商標権

商標 (trademark) とは、 企業が自社や自社の製品を認知させるために市場に流通させる記号・文字列のことです。 商標を占有的に使うには著作権と異なり登録が必要で、 登録された商標のことを 「登録商標」 といい、 ○Rという記号で表します。

商標権とは、 ライバル企業が、 既に市場での評価が確定している商標に対して、 同一の商標や紛らわしい商標を用いて利益を得ることで、 公正な市場原理が破壊されることを防ぐためにあるものです。 一見すると、 著作権に似ていますが、 「文学・音楽・芸術」 の創作物でなくても構いませんし、 「思想または感情を表現したもの」 でなくても構いません。

文書内にレイアウト・ロゴ・デザインなど登録商標名などを含む場合には、 商標権保持者の名称などを明示すべきです。

5.5 その他の権利

知的所有権には、 著作権や商標権の他に、 特許権、 意匠権、 実用新案、 不正競争防止法に関する権利などがあります。 また、 知的所有権は無体財産権ともいわれています。

5.6 インターネット社会

インターネット社会といっても、 現実には、 私たちの暮らす国際社会以外の何物でもありません。 国際社会にはさまざまな国があり、 それぞれの国の政府は、 それぞれの考え方で国を治めています。 私たちの暮らす日本国内で常識とされるさまざまな権利・義務や、 財産のありかた、 発言の自由なども国によっては制限されていることもあります。

本節では、 このように異なる国と国と結ぶインターネット社会における社会常識について考えます。

5.6.1 インターネット社会における「自由」

インターネット社会は、 NICによって提唱されたRFCにしたがった通信を行なうコンピュータネットワークです。 インターネット社会の 「自由」 とは、 国際社会の 「自由」 と同じです。 他者の権利を侵害しない限りは、 どんな行動も許されます。 例えば、 RFCにしたがって通信をするならば、 どのメーカーのコンピュータを用いても構いませんし、 どのメーカーのソフトウェアを用いても構いません。

しかし、 逆に言うと、 「どんな行動が他人の権利を侵害することになるのか」 について知らなければ、 何をして良いのかの判断がつきません。 つまり、 「自由を知る」 ということは、 「他者の権利を知る」 ということなのです。

5.6.2 インターネット社会における「平等」

インターネット社会では、 発言を行なうどの人も平等に扱われるます。

大統領の書いた電子メールでも、 国王の書いたWebページでも、 一旦インターネットに出てしまうと、 他のメッセージに優先されて処理されるということはありません。 どのメッセージも平等に扱われます。

また、 インターネット社会は、 コンピュータという機械を介してしか参加することが出来ない社会です。 したがって、 どんなコンピュータを使っているか、 どんなソフトウェアを使っているかなどで差別されることがあってはなりません。

さらに、 コンピュータと人間の関係にも注意を払う必要があります。 指の不自由で早くキーボードを打てない人、 色の区別がつきにくい人もインターネット社会に参加しています。 こういった人でも平等にメッセージを読んだり書いたりすることの出来るように配慮をする必要があります。

5.6.3 インターネット社会における「公正」

インターネット社会でも、 どの行動にも常に自己責任が求められます。 そのために、 インターネット社会では、 発言には実名を付け、 虚偽の内容を発信してはいけません。 また、 発言を行なったら、 インターネット利用者からの反応に責任を持って対処することが求められます。

また、 他人の情報を盗んだり、 ネットワークを通じて他人の使っているコンピュータを破壊する行為を行なってはいけません。

【演習】インターネット社会と現実の社会を比較して、 その特徴を表にしてみましょう。

5.7 ネットワーク社会の安全と危険

自分が書いた文書が社会に与える影響がどのようなものであるかについて、 文書を公開する際に慎重に検討するべきでしょう。

例えば、 暴動や戦争を扇動するような主張の掲示や、 現在の刑法上違法とされる内容の掲示、 また他人の名誉を著しく傷つける内容の掲示、 虚偽の掲示などは、 コンピュータを利用した文書作成の場においても、 新聞・放送・雑誌・映画などと同様に考える必要があります。

また、 犯罪行為を招く書き込みや、 自分が行なった違法行為、 行なおうとしている違法行為に関する文書の公表も注意すべきです。 例えば、 「録画し損ねたテレビ番組を誰かダビングさせてください」 というのは、 放送局の持つ放映権の侵害を招く行為です。 このような文書を作成・公表するべきではありません。 他にも、 「峠道で制限速度を無視してオートバイで競走をしました」「電話のタダがけの方法について教えて下さい」 などのような文書を公開することは、 謹むべきでしょう。

5.7.1 個人情報(プライバシー)の保護

個人情報とは、 その人の名前、 容姿 (顔などの部分的なものも含む)、 住所、 電話番号、 生年月日、 勤務先、 経歴、 宗教など、 その人について固有の情報すべてを指します。

現在の日本では、 こういった個人情報を 「プライバシー」 と呼び、 それらの公開範囲は、 本人が制御できるべきであるという考え方が一般的です。 プライバシー尊重の観点からも個人に関わる情報の電子的取り扱いについては慎重な対応が必要です。

どの組織でも、 個人情報の保護に関して規定を設けています。 組織の一員、 例えば社員や教員がこうした規定に拘束されることは当然ですが、 組織の一員でない顧客・学生であっても、 その会社のプライバシーに関わる事項を公開すべきではありません。 例えば、 顧客が何らかの手違いなどで、 公開されていない企業・学校の情報を知ってしまった場合などは、 その情報を公開すべきではないでしょう。

なお、 写真や動画などの場合は、 自ら撮影したものについては自由に利用できるという誤解をしがちですが、 被写体の肖像権や意匠権について侵害することのないような配慮も必要です。

情報が広く公開されるために、 他者のプライバシーに相当する個人情報や、 他者にとってマイナスイメージを抱かせるような情報の公開を行なうことは、 原則的には謹むべきでしょう。

【ちょっと気をつけて!】 もちろん、 街中のアンケートでも同様の危険はありますが、 WWWでは悪意を持った人がとても廉価かつ大規模に情報を収集できてしまうという問題点があるわけです。

具体的には、 どのような危険があるのでしょうか?

1. あなたが妙齢の男 (女) 性だと分かったために、 誰かが悪戯の目的で電話を書けて来たりするかも知れません。

2. 誰かがあなたの名前をかたって借金や商品購入などの詐欺行為を働くかも知れません。

3. 誰かがあなたの名前をかたってネットワーク上で好まれない行為を行い (例: 悪口を記したメッセージを送るなど)、 あなたの名誉を落としめようとするかも知れません。

このような危険を考えると、 個人情報 (あなたのものでも、 あなたの友人のものでも) の取り扱いには十分な注意が必要だと分かります。

【演習】自分の次に挙げた個人情報のうち、 何と何が他人に知られた場合、 どのように悪用される可能性があるかを列挙してみよ。

5.7.2 盗用と引用

自分の書いたものの中に、 あたかも自分の意見のようにして他人の著作物を含めることは、 著作物の盗用になります。 しかし、 盗用のない、 自分の考えのみに従って書いた文書でも、 既に自分と同じようなことを考えている他者が同じような文書を既に書いていないかどうかを調べることは重要です。 このようなことは発表前に調べておくべきでしょう。

【演習】 「引用」 と 「盗用」 の違いを、 著作権法などを参考にして考えてみましょう。

5.7.3 他者との共存

政治の違い

また、 国・地域によって文化・政治が異なり、 社会的に認められることと認められないことの判断が異なります。 従って、 「何がマナー違反か」「何が法律違反か」 も、 国・地域によって異なります。 例えば、 ある国家において自由に読める文書が別の国家では禁じられている状況を我々はほんの数年前まで日常的に経験していました。

私達がコンピュータを用いて作成したさまざまな文書は、 インターネットなどのネットワークを通して世界中に配布されることもあります。 したがって、 インターネットを使っての文書公開には、 非常に気をつけるべきです。 特に、 WWWのような情報公開システムの場合は、 この種の問題は非常に気をつける必要があります。

いくつかの国家・政府は既に、 ある種の情報の流通を法律で規制しています。 しかし、 内容と形式に関して良識が作用することによって自由な情報の流通を最大限確保しつつ、 法的な規制が最小限となることが望ましいことはいうまでもありません。 私達は、 「ネットワーク社会における表現の自由」 などを常に考えて行動を起こす必要があります。

【演習】外国の人と電子メールなどを使って情報交換をするときには、 どのような発言を行なってはいけないのかについてを、 国毎に調べてみましょう。

セクシュアル・ハラスメント

ネットワーク上のセクシュアル・ハラスメントについても注意する必要があります。 例えば、 女性が作成したWebページがあると、 そこに記述されたメールアドレス宛に受取人を不快にさせる電子メールが送られてくることがあります。 セクシャル・ハラスメントは、 特にコンピュータネットワーク上に限った問題ではないので、 コンピュータネットワーク上の場合に限って、 問題の原因を根本的に解決する有効な対策はありません。

確かに、 その人が女性であることを隠しさえすれば、 そのような問題から逃げることは可能ですが、 コンピュータネットワーク社会においては、 むしろ女性が非常に少ないことに問題の原因があるように思えます。 本当の意味で健全な解決をするには、 女性であることが特別視されないコンピュータネットワーク社会の登場を待つしかありません。

【演習】性別による差別以外に起こり得る差別について考えてみましょう。

バリアフリー

「バリアフリー」 とは、 障害者も、 そうでない人も、 共に暮らしやすい社会にするためにとり入れられた考え方です。

しかし、 コンピュータネットワーク利用時の障害者とは、 単に身体機能の障碍を持った人だけを指すのではありません。 例えば、 十分な通信速度を確保できない回線を使わざるを得ない人、 白黒のディスプレイしか用意できない状況の人なども、 ネットワーク社会においては障害者となり得ます。

そこで、 特にWWWなどの掲示に際しては、 身体機能の障碍を持った人、 通信環境に障碍のある人の環境を考慮したデザインを考えるべきです。 その際に一番注意したいのが、 色の問題です。

例えば、 色盲の人の存在があります。 特に、 赤緑色盲の人は、 かなり多くいます。 従って、 赤と緑の違いで何かの違いを表すようなことは、 なるべく避けるべきでしょう。 さらに、 利用者の持っている画面に表示できる色の数が多くない場合には、 色を多用した画像を正確に表示できなくなったり、 さらに、 他の正常な色で表示されているプログラムの色を変えてしまうこともあります。

【演習】私達が使っているコンピュータで、 バリアフリーの配慮がなされているもの、 配慮がなされていない物を取り上げてみましょう。 また、 配慮がなされていない物にどのような配慮を行なったら良いかを考えてみましょう。

5.7.4 セキュリティ

ネットワークにつながっているコンピュータを使っていると、 ネットワークを通してさまざまな情報が、 使っている人の意図しないところにまで配られてしまうことがあります。 また、 悪意を持って他人の使っているコンピュータに侵入を試み、 情報を盗み出したり、 そのコンピュータ上の情報を破壊したりする人もいます。

こういった行為は、 「クラッキング」 と呼ばれ、 犯罪行為です。

また、 ネットワークを使って情報交換をしていると、 中継の最中に内容が故意に書き換えられてしまうこともあります。 したがって、 情報の信頼性に問題が生じてしまうことがあります。

そこで、 このような漏洩・侵入・破壊・改変を未然に防ぐために考えられる対策のことを、 総じて 「セキュリティ」 といいます。

【演習】
  1. 大きな声を出さないで、 隣の教室にいる人と会話をするには、 どうしたらいいでしょうか? いくつかの方法を考えてみましょう。 また、 その時に問題となることを予想してみましょう。 さらに、 隣の教室ではなく隣の学校にいる人と会話をするにはどうしたらいいでしょうか?
  2. 実際に、 あなたの使っているコンピュータが 「クラッキング」 に遭った場合に、 どのような被害が起こるかを考えてみましょう。

教科書プロジェクト目次に 戻る /情報C入口に 戻る